大自然が創った神秘の銘木——神代杉
大自然が創った神秘の銘木
——神代杉

神代杉とは
数千年もの昔に自生していた杉の木が、
火山噴火や地殻変動によって
地中、海中、湖沼の底へと埋もれ、
長い年月を経てふたたび掘り出されたもの
——それが「神代杉(じんだいすぎ)」です。
「神代」とは「神の時代(かみよ)」を意味する古語。
人の歴史が始まるよりも遥か以前、
神話の時代から存在していたことを示す、
畏敬を込めた呼び名です。
杉のほかにも、檜(ヒノキ)や欅(ケヤキ)、栃(タモ)などが「神代木」として知られていますが、
中でも神代杉は、その渋みある色調と雅趣に富む佇まいから、
特に高く評価されてきました。
土中で育まれる神秘の色彩
長い間、土の中に埋もれていた神代杉。
その表面は黒灰色に変化しています。
しかし、鋸(のこぎり)で切り出すと、内側から美しい薄紅色が現れます。
そして空気に触れるにしたがい、
その色は淡墨色へとゆっくり変化していきます。
この色の移ろいこそ、神代杉だけが持つ神秘的な魅力です。
人工的な着色や加工では決して再現できない、
自然と時間だけが創り出す深い色合い。
人工的な着色や加工では決して再現できない、
自然と時間だけが創り出す深い色合い。
枯淡にして雅趣に富むその表情は、古来より日本人の美意識を捉え、
侘び・寂びの心を映す数寄屋造りや茶室の材として大切に用いられてきました。


鳥海山の大噴火と
仁賀保の神代杉



私たちが使用する神代杉は、
秋田県と山形県にまたがる鳥海山の麓、
秋田県由利郡仁賀保町(現・にかほ市)で出土したものです。
約2,500年前、鳥海山は大噴火を起こしました。
その火砕流や土石流によって、
山麓に自生していた巨木たちは
一瞬にして地中深くへと埋もれていったのです。
昭和58年、この地で邸宅の造成工事が行われていた際、
驚くべき発見がありました。
樹齢およそ1,500年、
円周11.5メートル、直径3.5メートルという、
想像を絶する巨大な神代杉が姿を現したのです。
2,500年もの眠りから目覚めたこの「超神代杉」は、
悠久の時を今に伝える、まさに奇跡の木材でした。
希少な素材を、後世へ
神代杉は自然の偶然と長大な時間によってのみ生まれる、
再生不可能な素材です。
一度使えば二度と手に入らない、地球からの贈り物ともいえます。
だからこそ私たちは、
この貴重な木を一片たりとも無駄にすることなく、
その美しさを最大限に引き出す作品づくりに取り組んでいます。
数千年の時を経て私たちの手元に届いた神代杉を、
工芸品というかたちで、次の時代へと受け継いでいく
——それが、神代杉工芸に携わる者の使命だと考えています。